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FP試験では、「配偶者に対する相続税額の軽減」(以下、配偶者の税額軽減)について、軽減される金額や、適用を受けるための決まりが問われます。
直近の出題回数は以下のとおりです。
| 級 | 直近の出題回数 |
|---|---|
| 3級(学科・実技) | 直近6回の公表分のうち5回 |
| 2級(学科・実技) | 直近9回の公表分のうち7回 |
| 1級学科 | 直近10回の公表分のうち4回 |
決まりが多く難しい制度ですが、FP試験には3級から1級までよく出ます。

決まりが多いと、どれがどの話だったか分からなくなるよ

まずは、なぜ配偶者だけ軽減されるのかから見ていこう。
最後に、5つの出題パターンにまとめるよ

1級FPライター
イシダ
FP全級を独学で一発合格(1級はきんざい学科→協会実技)/相続とタックスが得意/元・会計事務所/ Lancers金融ライタースペシャリスト認定
配偶者は「1億6,000万円」と「法定相続分相当額」の多いほうまで相続税がかからない
配偶者には、子やほかの相続人にはない、相続税の大きな軽減があります。
配偶者が取得した財産が、「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」の多いほうまでなら、配偶者の納付すべき相続税額は算出されず、相続税はかかりません。
法定相続分は民法で決められた相続の割合で、配偶者と子が相続人なら、配偶者の法定相続分は2分の1です。

相続人が配偶者だけだったら?

そのときの法定相続分は、全部だよ
法定相続分相当額は、相続税の課税価格の合計額(相続や遺贈で財産を取得した人全員の、相続税の計算のもとになる金額の合計)のうち、配偶者の法定相続分にあたる金額です。

課税価格って何?

相続税の計算のもとになる、財産を取得した人ごとの財産の価格だよ。
評価額とまったく一緒ではなくて、たとえば、評価額1,000万円の自宅の敷地(200㎡)に「小規模宅地等の特例」をつかった場合、課税価格に入れる金額は200万円になるよ
例として、配偶者と子が相続人であるケースにおいて、相続税の課税価格の合計額が「2億円」と「4億円」のパターンで比較します。
| 課税価格の合計額 | 2億円 | 4億円 |
|---|---|---|
| 配偶者の法定相続分相当額(2分の1) | 1億円 | 2億円 |
| 軽減を受けられる金額 | 1億6,000万円まで | 2億円まで |

4億円のほうは、2億円まで配偶者の相続税は0円になるってこと?

そう。
1億6,000万円は上限じゃなく、最低保証の金額なんだ
では、なぜ配偶者だけ、ここまで大きく軽減されるのでしょうか。
なぜ配偶者だけ相続税が大きく軽減されるのか
配偶者の相続税が軽減される3つの理由
配偶者の税額軽減は、次の3つの理由などを考えて設けられたとされています。
1.配偶者への相続は同じ世代の間の財産の移転で、遠からず次の相続が起き、そこでまた相続税がかかるのが通常であること
2.長年共同生活を営んできた配偶者への配慮
3.遺産を維持し形成してきた配偶者の貢献
1つ目の理由については、夫の遺産を妻が相続した場合、その財産は、いずれ妻が被相続人(亡くなった人)となる次の相続で子などへ移り、そこでまた相続税の対象になる、という意味合いです。
1億6,000万円に引き上げられた背景
では、なぜ1億6,000万円という、一般の家庭にとってはかなり高額な優遇になったのでしょうか。
金額の明確な根拠は見当たりませんが、財務省の資料に、平成6年度の税制改正で、それまでの8,000万円から1億6,000万円に引き上げられたときの当時の背景がわかるものがありました。

当時は地価の高騰で、都市部の相続税の負担が社会問題になっていたそうだよ
財務省の「財政史」を読むと、当時この改正によって「公示地価10億円(200㎡)の土地を配偶者が相続しても相続税が課税されないようになった」と説明されている箇所があります。
この土地を8割で評価し、さらに小規模宅地等の特例で8割減らした価格が、ちょうど1億6,000万円になるから、ということのようです。

まってまって……
1㎡あたりにすると、500万円の土地じゃないか……

そうなるね
東京都財務局の令和8年地価公示価格の資料をみると、今その水準にあるのは港区の赤坂、白金台、南麻布などです
1億6,000万円という金額に地域による違いはないので、都市部でも地方でも同じ金額が適用されます。
かなり太っ腹といえるかもしれません。
▷財務省|財務総合政策研究所『平成財政史』第4巻より ↗(外部サイト)
配偶者の税額軽減は相続放棄をしても遺贈で取得した財産に適用される
対象は「相続人」ではなく「配偶者」と法律で決まっている
相続税法は、配偶者の税額軽減の対象を、「相続人」ではなく「配偶者」と決めています(相続税法第19条の2)。
そのため、配偶者が相続放棄をしても、遺贈(遺言で財産を渡すこと)で取得した財産があれば、配偶者の税額軽減は適用されます(相続税法基本通達19の2-3)。

相続放棄をしたら、財産は受け取れないんじゃないの?

遺言で受け取る道が残っているよ
相続放棄をすると、初めから相続人でなかったものとされます。
それでも、被相続人の配偶者であることは変わらず、遺贈で財産を受け取ることはできます。
相続税法が見ているのは、相続人であるかどうかではなく、「配偶者であるかどうか」なのです。
死亡保険金の非課税限度額とは制度が対象にしている人が違う

ここ、いちばん紛らわしいと思ってる。
死亡保険金の非課税限度額は、相続放棄をしたら適用されないもんね……

わかる。
でも2つの制度は、誰を対象にした制度かが違うんだ
相続放棄をすると適用されなくなる制度もあり、その1つが死亡保険金の非課税限度額です。
死亡保険金の非課税限度額は、残された相続人の生活を守るための制度なので、「民法上の相続人」を対象にしています。
そのため、相続放棄をして相続人でなくなった人には、非課税限度額は適用されません。
一方、配偶者の税額軽減は、「配偶者」の遺産への貢献などを特別に扱うために、相続税法が独自に対象を決めた制度です。
対象は、相続人であるかどうかではなく、配偶者であるかどうかなので、相続放棄をしたかどうかは関係がありません。
適用を受けるために覚えておく3つの決まり
配偶者の税額軽減には、金額と相続放棄の扱いのほかに、適用を受けるための決まりがあと3つあります。
法律上の配偶者なら婚姻期間は問わない
配偶者の税額軽減が適用されるのは、婚姻の届出をした、法律上の配偶者に限られます。
内縁関係の人には適用されません。
一方で、婚姻期間の要件はないため、婚姻の届出をした翌日に相続が起きても、配偶者の税額軽減は適用されます。

サスペンスドラマが始まりそう!

変なこと考えないでね(笑)

あれ?贈与税の配偶者控除(いわゆるおしどり税制)は、婚姻期間20年が要るよね?

そう。
婚姻期間が20年を過ぎた夫婦の間で、居住用不動産やそれを取得するための金銭を贈与したときに、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円を控除できる制度だよ
実は、配偶者の税額軽減にも、昭和50年(1975年)の改正までは、より大きな軽減を受けるには婚姻期間10年以上という要件がありました。
この要件をなくしたときの国会での説明では、相続は人がどうにもできない出来事なので、配偶者への配慮を徹底して婚姻期間を問わないことにし、贈与は自分の意思で行うものなので、相当程度の期間(20年)が要る、とされています(1975年2月25日の衆議院大蔵委員会)。

配偶者の税額軽減に婚姻期間の条件がない理由として、試験対策としては「人が時期を決められない(予測できない)ことだから」と覚えればいいね
相続税額が0でも申告が要る
配偶者の税額軽減で納付すべき相続税額が0になる場合でも、相続税の申告書を提出しないと、配偶者の税額軽減は適用されません。

税金が0なのに、申告書を出すの?

そう。
この特例を適用するために、相続税の申告が必要なんだ。
FP試験で、もし『0なら申告不要』としている選択肢があればそれは誤りです。近年の試験で、実際に出題されています。
申告期限までに分割されていない財産は原則として対象外
配偶者の税額軽減は、配偶者が実際に取得した財産に適用されます。
申告期限までに遺産分割が終わっていない財産は、誰が取得するかが決まっていないので、原則として対象外です。
ただし、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付のうえ申告し、申告期限から3年以内に分割すれば、対象になります。
申告期限から3年以内に分割できないやむを得ない事情があるときは、税務署長の承認を受ければ、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割しても対象になります。
分割したあとは、分割が成立した日の翌日から4か月以内に、更正の請求をします。
更正の請求は、申告のときに受けられなかった軽減の分の税金を取り戻す手続きです。
ここまでに出てきた期限を、まとめると次のとおりです。
| 期限 | 何の期限か |
|---|---|
| 申告期限から『3年以内』 | 分割するまで (申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付) |
| やむを得ない事情がなくなった日の翌日から『4か月以内』 | 分割するまで (税務署長の承認を受けたとき) |
| 分割が成立した日の翌日から『4か月以内』 | 分割したあと、更正の請求をするまで |

『4か月』が2つあるの?

そう。
何の期限かは違うけど、どちらも同じ『4か月』で、FP試験でも出題されているよ
配偶者の税額軽減の「5つの出題パターン」
配偶者の税額軽減の過去問を分析した結果、5つの出題パターンが見られます。
まずは、問題文で問われている制度が「相続税における配偶者の税額軽減」であることを確認し、その上でどの部分の知識が求められているのかを読み取ることが大切です。
以下で、問題文(選択肢など)に出てくるキーワードと、問われている知識を一覧にしました。

ここからは、あくまで相続税の配偶者の税額軽減の問題を解くための知識です
他の制度(贈与税の配偶者控除、死亡保険金の非課税など)にはあてはまりません!

まずは、問われているのが相続税における配偶者の税額軽減かどうかを読み取ることが、めちゃくちゃ大事だね
パターン①:「1億6,000万円」「法定相続分相当額」「いずれか多い金額」
配偶者が取得した財産が、2つの金額の多いほうまでなら、配偶者の納付すべき相続税額は算出されません。
法定相続分相当額のほうが多ければ、1億6,000万円を超えても、法定相続分相当額までは相続税がかかりません。
パターン②:「相続の放棄」「遺贈」
配偶者の税額軽減の対象は、相続人であるかどうかではなく、配偶者であるかどうかです。
相続放棄をして相続人でなくなっても、配偶者であることは変わらないので、遺贈で取得した財産には適用されます。
パターン③:「婚姻期間」「内縁」
婚姻の届出をした、法律上の配偶者に限られます。
内縁関係の人には適用されません。
また、婚姻期間の長さは適用に関係ありません。
パターン④:「相続税額が0」「申告書を提出する必要はない」
納付すべき相続税額が0になる場合でも、申告書を提出しないと適用されません。
パターン⑤:「分割されていない財産」
申告期限までに分割されていない財産は、原則として対象外です。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付のうえ申告し、申告期限から3年以内に分割すれば対象になります。
やむを得ない事情があり税務署長の承認を受けたときは、その事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割すれば対象になります。
分割したあとは、分割が成立した日の翌日から4か月以内に更正の請求をします。
過去問
直近の過去問から、正答に必要となる主な知識をまとめます。
| 級 | 正答するための主な知識 |
|---|---|
| 3級 | ・配偶者が取得した財産が、「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」の多いほうまでなら、相続税がかからないこと |
| 2級 | ・3級の知識に加えて、税額が0でも申告が要ること ・未分割の財産は「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して3年以内に分割すれば対象になること ・相続放棄をしても遺贈で取得した財産には適用されること ・婚姻期間は問わないこと |
| 1級 | ・2級の知識に加えて、未分割の財産の2つの「4か月」(やむを得ない事情がなくなった日の翌日から/分割が成立した日の翌日からの期限)、「更正の請求」なども問われる |
この論点は、覚えることが多いだけでなく、他の制度と混同しないことが大切です。
最初に、配偶者の税額軽減の問題であることを確かめて、制度の趣旨(なぜ相続放棄をした配偶者でも遺贈なら適用されるのか、なぜ婚姻期間の条件がないのか)を思い出せば、迷いません。
3級
被相続人の配偶者が「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用を受けた場合、配偶者の相続税の課税価格が、相続税の課税価格の合計額に対する配偶者の法定相続分相当額または2億円のいずれか多い金額までであれば、原則として、配偶者が納付すべき相続税額は算出されない。
【出典】日本FP協会 FP3級 学科試験 2025年公表分 問29を加工して作成
パターン①の問題です。
この問題文では、配偶者が取得した財産の金額を「配偶者の相続税の課税価格」と書いています。
「法定相続分相当額」と「いずれか多い金額まで」の部分は正しく、「2億円」の部分が誤りです。
【正解】✕(2億円ではなく1億6,000万円)

他には、「1億6,000万円」と「いずれか多い金額」の「多い」が、学科の三択や実技の組合せ問題で空欄になっています(2023年5月〜2024年5月に3回)。
2級
配偶者に対する相続税額の軽減(以下「配偶者の税額軽減」という)に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。
【出典】きんざい・日本FP協会 FP2級 学科試験 2025年1月 問55を加工して作成
1.配偶者の税額軽減の適用を受けることにより配偶者の納付すべき相続税額が0(ゼロ)となる場合、当該配偶者は相続税の申告書を提出する必要はない。
2.相続税の申告期限までに分割されていない財産は、原則として、配偶者の税額軽減の対象とならないが、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割したときは、配偶者の税額軽減の対象となる。
3.相続の放棄をした被相続人の配偶者が遺贈により取得した財産は、配偶者の税額軽減の対象とならない。
4.配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、相続が開始した日の前日において被相続人との婚姻期間が20年以上でなければならない。

この問題は、4つの選択肢がすべて配偶者の税額軽減の出題パターンだよ
1.配偶者の税額軽減の適用を受けることにより配偶者の納付すべき相続税額が0(ゼロ)となる場合、当該配偶者は相続税の申告書を提出する必要はない。
選択肢1で見るのは、「申告書を提出する必要はない」の部分です。
相続税額が0になる場合でも、申告書を提出しないと、配偶者の税額軽減は適用されません(パターン④)。
【正解】✕(不適切:相続税額が0でも申告が要る)
2.相続税の申告期限までに分割されていない財産は、原則として、配偶者の税額軽減の対象とならないが、相続税の申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限までに分割されなかった財産について申告期限から3年以内に分割したときは、配偶者の税額軽減の対象となる。
選択肢2で見るのは、「分割されていない財産」と「3年以内」の部分です。
「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限から3年以内に分割すれば対象になるので、決まりのとおりです(パターン⑤)。
【正解】〇(適切:この選択肢がこの問題の正答)
3.相続の放棄をした被相続人の配偶者が遺贈により取得した財産は、配偶者の税額軽減の対象とならない。
選択肢3で見るのは、「相続の放棄」と「遺贈により取得した財産」の部分です。
対象は「配偶者」なので、相続放棄をしても、遺贈で取得した財産には適用されます(パターン②)。
【正解】✕(不適切:相続放棄をしても、遺贈で取得した財産には適用される)
4.配偶者の税額軽減の適用を受けるためには、相続が開始した日の前日において被相続人との婚姻期間が20年以上でなければならない。
選択肢4で見るのは、「婚姻期間が20年以上」の部分です。
配偶者の税額軽減には婚姻期間の要件がなく、婚姻の届出をした配偶者なら、婚姻期間の長さにかかわらず適用されます(パターン③)。
【正解】✕(不適切:婚姻期間は問わない)

実技(きんざい)では、この記事の言葉が語句群から選ぶ穴埋めで問われています(個人・生保・損保で2023年5月〜2024年9月に6回)。定番は「いずれか多い金額」の「多い」を選ばせる形です。未分割の「3年」が問われた回もありました。
1級
1)被相続人の配偶者は、相続の放棄をした場合であっても、遺贈により取得した財産があるときは、「配偶者に対する相続税額の軽減」の適用を受けることができる。
【出典】きんざい FP1級 学科試験(基礎編)2025年5月 問48の一部を加工して作成
見るのは、「相続の放棄をした場合であっても」と「遺贈により取得した財産があるとき」の部分です。
対象は「配偶者」なので、相続放棄をしても、遺贈で取得した財産には適用されます(パターン②)。
【正解】〇(適切:相続放棄をしても、遺贈で取得した財産には適用される)
1級の学科(応用編)では、設例つきの大問の中で、この記事の数字や言葉がそのまま穴埋めで問われています(1億6,000万円・3年・4か月・更正の請求。2023年9月・2026年5月)。2つの「4か月」を問う出題もありました。
まとめ
配偶者が取得した財産は、「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」の多いほうまで、相続税がかかりません。
配偶者への相続は同じ世代の間の財産の移転で、遠からず次の相続でまた相続税の対象になるうえ、配偶者は遺産を一緒に築いてきたからです。
法律はこの軽減の対象を「相続人」ではなく「配偶者」と決めているので、相続放棄をしても、遺贈で取得した財産には適用されます。
そのうえで、適用を受けるための3つの決まりを覚えておきます。
1.法律上の配偶者(婚姻の届出をした人)に限る。婚姻期間は問わない。
2.相続税額が0になっても、申告が要る。
3.申告期限までに分割されていない財産は、原則として対象外。「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付のうえ申告し、3年以内に分割すれば対象になる。やむを得ない事情があり税務署長の承認を受けたときは、事情がなくなった日の翌日から4か月以内に分割すれば対象になる。分割後4か月以内に更正の請求をする。
