FP試験では、贈与税の配偶者控除(おしどり税制)について、婚姻期間や控除額の数字と、適用を受けるための決まりが問われます。
直近の出題回数は以下のとおりです。
| 級 | 直近の出題回数 |
|---|---|
| 3級(学科・実技) | 直近8回の公表分のうち3回 |
| 2級(学科・実技) | 直近9回の公表分のうち6回 |
| 1級学科 | 直近10回の公表分のうち2回 |
3級で問われる数字は、主に婚姻期間の「20年」と控除額「2,000万円」の2つだけです。
2級・1級で増える決まりも、なぜ婚姻期間20年が要るのかという理屈とセットで覚えれば、1級の選択肢までそのまま正誤判定に使えます。
名前の似た「配偶者に対する相続税額の軽減」との混同をねらった出題もみられますが、この記事の中では、丸暗記にならないよう制度の趣旨から違いを説明します。

婚姻期間20年って、ずいぶん長い条件だね

そこにこの制度の趣旨が詰まっているんだ。
最後に6つの出題パターンにまとめるよ

1級FPライター
イシダ
FP全級を独学で一発合格(1級はきんざい学科→協会実技)/相続とタックスが得意/元・会計事務所/ Lancers金融ライタースペシャリスト認定
配偶者からの居住用不動産の贈与は2,110万円まで贈与税がかからない
贈与税は、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の合計額(課税価格)から、基礎控除110万円を引いた残りの金額にかかります(暦年課税)。
さらに、婚姻の届出をした日から、贈与を受けた日までの期間が20年以上ある配偶者から、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与を受けたときは、この課税価格から、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円を控除できます。
これが贈与税の配偶者控除で、「おしどり税制」「おしどり贈与」という通称で呼ばれます。

『おしどり』って何?

仲のよい夫婦を『おしどり夫婦』と呼ぶよね。
そこからきた通称だよ

仮面夫婦でも大丈夫?

びっくりすること言うね…
でも、現実の仲のよさは(わからないから)問われないよ
法律上の配偶者としての期間が20年以上あることが条件なんだ
この贈与税の配偶者控除を適用すると、基礎控除と合わせて最高2,110万円までの贈与に贈与税がかからないことになります。

2,000万円と2,110万円、どっちを覚えればいいの?

どっちも出るよ。
基礎控除110万円を含めて言うかどうかの違いだけなんだ
試験の選択肢では、同じ内容が2つの言い方で出ます。
| 選択肢の言い方 | 金額 |
|---|---|
| 基礎控除額のほかに | 最高2,000万円 |
| 基礎控除額と合わせて | 最高2,110万円 |
なぜ対象が居住用不動産に限られるのか
贈与税の配偶者控除において、控除の対象になる贈与財産は、居住用不動産と、居住用不動産を取得するための金銭だけです。
居住用不動産とは、受け取った配偶者が住むための家屋やその敷地を指します。

どうして、住まいに関する財産だけなの?

将来、残される配偶者の生活を守るための制度だからなんだ
国税不服審判所の裁決でも、この控除は、夫婦の間の贈与が配偶者の生活保障を目的として行われることが多いことなどを考慮して設けられた、と説明されています。
生活保障という趣旨に照らして最も適当な財産が、生活の基盤になる住まい、つまり居住用不動産だからです。
▷国税不服審判所 公表裁決事例(平5.5.21、裁決事例集No.45)
なぜ婚姻期間20年が要るのか
同じ配偶者への優遇でも、相続税の配偶者の税額軽減には、婚姻期間の要件がありません。
なぜ贈与税の配偶者控除だけ、20年という長い期間が要るのでしょうか。
贈与は自分の意思で時期を選べる
贈与は、財産を渡す人が自分の意思で行うものです。
いつ渡すか、何を渡すかを、自分で選べます。
一方、相続は人の死亡で始まるので、いつ起きるかは誰にも選べません。
この違いは、昭和50年(1975年)の国会で説明されています。
相続は人がどうにもできない出来事なので、配偶者への配慮を徹底して、相続税の軽減には婚姻期間を求めない、とされました。
贈与は自発的な意思に基づいて行われるものなので、相当程度の婚姻期間が要る、そのラインが20年だ、という説明です。

時期を選べるなら、結婚してすぐ贈与もできちゃうもんね

そう。
だから、長年連れ添った夫婦に限る線が引かれたんだ

「20年」はどうやって決まったの?

それがちょうどいいラインだと判断されたみたいだね。
当時の国会では『相続税は0年なのに、贈与税の20年は長すぎる。10年などに短縮すべきではないか』という議論もあったけど、銀婚(結婚25年)のように長年連れ添ったといえる少し手前の線、ということで20年なんだって
▷国会会議録検索システム(第75回国会 衆議院大蔵委員会 第10号、1975年2月25日) ↗(外部サイト)
相続税の配偶者の税額軽減は婚姻期間を問わない
似た制度である「相続税の配偶者の税額軽減」は、婚姻の届出をした配偶者であれば、婚姻期間を問わず適用されます。
相続は時期を選べないからです。
2級では、この「相続税の配偶者の税額軽減」のほうに「婚姻期間20年以上」の要件があるとする、誤りの選択肢も出ています。
贈与税の配偶者控除の20年を、別の制度に当てはめないよう、どちらを問われているのか問題文をしっかり読むことが大切です。
婚姻期間20年は贈与を受けた日で判定する
要件は、婚姻の届出をした日から、贈与を受けた日までの期間が、20年以上あることです。
20年以上あるかどうかは、贈与を受けた日で判定します。
年の途中で婚姻期間が20年に達した場合も、20年に達した日からの贈与であれば適用を受けられます。
試験では、「贈与を受けた年の1月1日において婚姻期間が20年以上」という誤りの選択肢が、2級でも1級でも出ています。
「その年の1月1日で判定する」決まりは別の制度の年齢判定などでよく使われるため、見覚えのある形に引っぱられやすいのですが、婚姻期間は贈与を受けた日で判定します。
数字と婚姻期間のほかに覚えておく決まり
贈与税の配偶者控除には、数字と婚姻期間のほかにも、覚えておく決まりがあります。
同じ配偶者からは一生に一度しか適用を受けられない
贈与税の配偶者控除は、同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか適用を受けられません。
過去にその配偶者からの贈与で配偶者控除の適用を受けたことがあれば、再び適用を受けることはできません。
毎年使える基礎控除110万円とは、ここが違います。
贈与税額が0でも申告が要る
贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、贈与税の申告をすることが必要です。
控除によって納付すべき贈与税額が0になる場合でも、申告書を提出しないと適用されません。

税金が0なのに申告書を出すんだね

そう。
『0なら申告不要』は、ここでも誤りの形だよ
申告書には、戸籍の謄本または抄本、戸籍の附票の写しなどの一定の書類を添付します。
税額が0でも申告が要ることも、申告書に添付する書類も、どちらも試験で問われたことがあります。
控除された金額は相続税の課税価格に加算されない
相続や遺贈(遺言で財産を渡すこと)で財産を取得した人が、相続開始前の一定期間内に被相続人(亡くなった人)から贈与を受けていた場合、その贈与財産は、相続税の課税価格に加算されます(生前贈与加算)。
亡くなる直前のいわゆる「駆け込み贈与」によって、相続税の負担を軽くすることを防ぐための仕組みです。
ただし、贈与税の配偶者控除の適用を受けた財産のうち、控除額に相当する金額分は、対象期間内の贈与でも、加算の対象になりません。
つまり、配偶者控除で控除された最高2,000万円分は、いつ贈与しても、相続税の課税価格に戻りません。
一方、基礎控除110万円分は、相続直前の一定期間内の贈与であれば、加算の対象になります。

生前にもらったはずの財産が、相続税の対象になっちゃうことがあるんだ

でも、この配偶者控除でもらった最高2,000万円までの分は、加算対象にならないよ
一方、基礎控除の110万円分は、加算対象から除外されていないため、相続税の対象になるよ
民法の「特別受益の持戻し免除の推定」との関係

民法の話?何か関係があるの?
民法の特別受益の持戻し免除の推定(民法903条4項)とは、2018年の相続法改正で新設された制度です。
婚姻期間が20年以上である配偶者から贈与・遺贈された居住用不動産を「特別受益として扱わなくていい」というもので、平たくいうと、贈与された住まいが、遺産分割の取り分の計算で差し引かれないようにする規定になります。

せっかく配偶者に贈与した住まいが、後に遺産分割の取り分の計算に持ち戻されたら、配偶者が他の財産をほとんど受け取れず生活に困る可能性もあります。

それだと配偶者の生活を守れないから、このルールをつくったんだね。
で、その条件をつくるときに贈与税の配偶者控除の「20年以上の婚姻期間」も参考にしたんだね
1級の学科試験では、婚姻期間20年以上の夫婦の間の居住用不動産の遺贈・贈与について、持戻し免除の意思表示が推定されるかどうかがよく問われています(2023年5月・2024年9月・2025年5月)。婚姻期間を「10年以上」とする誤りの選択肢も出ています。
▷(参考)法務省|法制審議会民法(相続関係)部会第15回会議 ↗(外部サイト)
贈与税の配偶者控除の「6つの出題パターン」
贈与税の配偶者控除の直近の過去問を分析した結果、6つの出題パターンが見られます。
まずは、問題文から贈与税の配偶者控除について問われていることを判断し、その上でどの知識を問われているかを判断することが大切です。
以下で、問題文(選択肢など)に出てくるキーワードと、問われている知識を一覧にしました。

ここからは、あくまで贈与税の配偶者控除の問題を解くための知識です。
他の制度(相続税の配偶者の税額軽減など)にはあてはまりません!

まずは、問われているのが贈与税の配偶者控除かどうかを読み取ることが大事なんだね
パターン①:「婚姻期間」「20年」「1月1日」
贈与をうける配偶者と婚姻の届出をした日から、贈与を受けた日までの期間が、20年以上あることが要件です。
判定するのは、贈与を受けた日(贈与を受けた時点)です。
「贈与を受けた年の1月1日において20年以上」とするひっかけがありますが、これは誤りです。
パターン②:「居住用不動産」「財産の種類」
対象は、居住用不動産と、居住用不動産を取得するための金銭だけです。
対象になる財産の種類は限られ、控除できる金額も最高2,000万円までなので、「財産の種類や金額に制限はない」は誤りです。
パターン③:「基礎控除」「2,000万円」「2,110万円」
基礎控除110万円のほかに、最高2,000万円を控除できます。
「基礎控除額と合わせて最高2,110万円」も、同じ内容の正しい言い方です。
パターン④:「同一の配偶者」「再び」
同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか適用を受けられません。
パターン⑤:「贈与税額が算出されない」「申告書」
納付すべき贈与税額が0になる場合でも、申告書を提出しないと適用されません。
パターン⑥:「相続税の課税価格」「加算」
配偶者控除の適用を受けた財産のうち、控除額に相当する金額は、相続税の課税価格への加算(生前贈与加算)の対象になりません。
過去問
直近の過去問から、正答に必要となる主な知識をまとめます。
| 級 | 正答するための主な知識 |
|---|---|
| 3級 | ・「婚姻期間20年以上」と「基礎控除額のほかに最高2,000万円」の2つの数字 |
| 2級 | ・3級の数字に加えて、20年は贈与を受けた日で判定すること ・対象は居住用不動産とその取得のための金銭に限られること ・同じ配偶者からは一生に一度であること ・贈与税額が0でも申告が要ること ・控除された金額に相当する部分は相続税の課税価格に加算されないこと |
| 1級 | ・基礎編では2級と同じ知識で判断できる選択肢が出る ・応用編では、居住の期限や添付書類・店舗併用住宅の扱いなど細部も穴埋めで問われる |
3級
贈与税の配偶者控除は、婚姻期間が( 1 )以上である配偶者から居住用不動産の贈与または居住用不動産を取得するための金銭の贈与を受け、所定の要件を満たす場合、贈与税の課税価格から基礎控除額のほかに最高で( 2 )を控除することができる特例である。
【出典】日本FP協会 FP3級 学科試験 2025年公表分 問56を加工して作成
1)(1)10年 (2)2,500万円
2)(1)10年 (2)2,000万円
3)(1)20年 (2)2,000万円
空欄2つとも、数字の問題です(パターン①とパターン③)。
(1)は、婚姻期間なので20年です。
(2)は、「基礎控除額のほかに」とあるので、2,000万円です。
【正解】3)((1)20年、(2)2,000万円)
2級
贈与税の配偶者控除(以下、「本控除」という)に関する次の記述のうち、最も不適切なものはどれか。
【出典】日本FP協会 FP2級 学科試験 2026年公表分 問52を加工して作成
1)本控除の適用を受けるためには、贈与を受けた時点で、贈与者である配偶者との婚姻期間が20年以上でなければならない。
2)本控除の適用を受けるにあたって、配偶者から贈与を受ける財産の種類や金額に制限はない。
3)過去に本控除の適用を受けたことがある場合、その後、同一の配偶者から贈与を受けても、再び本控除の適用を受けることはできない。
4)本控除の適用を受ける場合、贈与税額の計算上、贈与税の課税価格から、基礎控除額と合わせて最高で2,110万円を控除することができる。

この問題は、4つの選択肢がすべて贈与税の配偶者控除の出題パターンだよ
1)本控除の適用を受けるためには、贈与を受けた時点で、贈与者である配偶者との婚姻期間が20年以上でなければならない。
選択肢1で見るのは、「贈与を受けた時点で」「婚姻期間が20年以上」の部分です。
婚姻期間20年以上は、贈与を受けた日で判定するので、決まりのとおりです(パターン①)。
【正解】〇(適切:婚姻期間20年は、贈与を受けた日で判定する)
2)本控除の適用を受けるにあたって、配偶者から贈与を受ける財産の種類や金額に制限はない。
選択肢2で見るのは、「財産の種類や金額に制限はない」の部分です。
対象は居住用不動産とその取得のための金銭に限られ、控除できる金額も最高2,000万円までです(パターン②)。
【正解】✕(不適切:この選択肢がこの問題の正答)
3)過去に本控除の適用を受けたことがある場合、その後、同一の配偶者から贈与を受けても、再び本控除の適用を受けることはできない。
選択肢3で見るのは、「同一の配偶者から」「再び」の部分です。
同じ配偶者からの贈与については一生に一度なので、決まりのとおりです(パターン④)。
【正解】〇(適切:同じ配偶者からは一生に一度)
4)本控除の適用を受ける場合、贈与税額の計算上、贈与税の課税価格から、基礎控除額と合わせて最高で2,110万円を控除することができる。
選択肢4で見るのは、「基礎控除額と合わせて最高で2,110万円」の部分です。
基礎控除110万円のほかに最高2,000万円なので、合わせて2,110万円で正しい言い方です(パターン③)。
【正解】〇(適切:基礎控除額と合わせて最高2,110万円)
2級の実技(資産設計提案業務)では、配偶者から贈与された居住用不動産の評価額から2,110万円を引いて贈与税額を計算させる出題が続いています(2024年5月〜2026年公表分に3回)。
1級
1)夫から居住用不動産の贈与を受けた妻が贈与税の配偶者控除の適用を受けるためには、夫との婚姻期間が贈与を受けた日の属する年の1月1日において20年以上でなければならない。
【出典】きんざい FP1級 学科試験(基礎編)2025年5月 問43の一部を加工して作成
見るのは、「贈与を受けた日の属する年の1月1日において」の部分です。
婚姻期間20年以上の判定は、贈与を受けた日で行います(パターン①)。
1月1日までさかのぼって判定する決まりはありません。
2級の選択肢1と同じパターンで解けます。
【正解】✕(誤り:1月1日ではなく、贈与を受けた日で判定する)
夫から妻に対して、居住用不動産(相続税評価額2,500万円)の贈与が行われ、妻が贈与税の配偶者控除の適用を受けた年の翌年に夫が死亡した場合、夫の相続により財産を取得した妻の相続税の課税価格に390万円が加算される。
【出典】きんざい FP1級 学科試験(基礎編)2025年5月 問43の一部を加工して作成
見るのは、「390万円」の部分です。
加算されるのは、2,500万円から、控除された2,000万円を除いた500万円です。
390万円は、2,500万円から2,110万円を引いた金額で、基礎控除110万円分まで加算の対象から除いてしまっています。
【正解】✕(誤り:加算されるのは500万円。基礎控除110万円分は加算の対象になる)
1級の応用編では、贈与を受けた年の翌年3月15日までの居住や、申告時の添付書類(戸籍の謄本など)、店舗併用住宅をどこまで居住用と扱うかといった細部まで、穴埋めで問われます(2024年9月)。
まとめ
婚姻の届出をした日から、贈与を受けた日までの期間が20年以上ある配偶者から、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与を受けたときは、贈与税の課税価格から、基礎控除110万円のほかに最高2,000万円を控除できます。
なぜ20年もの婚姻期間を必要としたかというと、贈与は自分たちの意思で時期を選べるためで、長年連れ添った夫婦で線引きされています。
一方、相続税の配偶者の税額軽減で婚姻期間の長さが問われないのは、相続が時期を選べないためです。
最後に、覚えておく決まりをおさらいします。
1.婚姻期間20年は、贈与を受けた日で判定する。
2.対象は、居住用不動産と、居住用不動産を取得するための金銭だけ。
3.同じ配偶者からの贈与については、一生に一度しか適用を受けられない。
4.贈与税額が0になっても、申告が要る。
5.控除された金額に相当する部分は、相続税の課税価格に加算されない。
