【FP2級学科】2025年1月試験 金融資産運用を解説(後編)

2025年1月のFP2級の学科試験の金融資産運用を解いてみました。

過去問の出典

日本FP協会 2級ファイナンシャル・プランニング技能検定学科試験2025年1月

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下記<資料>に基づき算出されるX社およびY社の株式の投資指標に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。

<資料>

X社Y社
株価2,500円 1,300円
当期純利益210億円190億円
純資産(自己資本)6,000億円 2,800億円
配当金総額120億円 70億円
発行済株式数4億株3億株

選択肢1

1.ROEは、Y社よりもX社の方が高い。

1:誤り(✖)

解説

X社:3.5%(210億円/6,000億円×100)

Y社:6.8%(190億円/2,800億円×100)

ROEとは自己資本比率のことです。「当期純利益/自己資本×100」で求めます。

ROE(Return On Equity)の「エクイティ」が「自己資本」に結びつくと回答しやすいです。

株主出資による自己資本での資金調達を「エクイティ・ファイナンス」といいます。

他人資本である「デット・ファイナンス」(銀行融資など)とよく比べられます。

選択肢2

2.PERは、X社よりもY社の方が高い。

2:誤り(✖)

解説

X社:47.6倍(2,500円/210億円÷4億株)

Y社:20.5倍(1,300円/190億円÷3億株)

PERとは株価収益率のことです。「株価/1株あたり当期純利益(EPS)」で求めます。

PERとPBRの分母「1株あたり純◯◯」が覚えづらいですが、PER(Price Earnings Ratio)は「Earn(得る・稼ぐ)」で「純利益」だと思い出しましょう。

選択肢3

3.PBRは、Y社よりもX社の方が高い。

3:正しい(正答)

解説

X社:1.67倍(2,500円/6,000億円÷4億株))

Y社:1.39倍(1,300円/2,800億円÷3億株)

PBRとは株価純資産倍率のことです。「株価/1株あたり純資産」で求めます。

PER(Price Book-value Ratio)の「Book-value」から「帳簿上の価値」→「企業の純資産」と連想しましょう。

純資産は資産から負債を返済した残りなので、企業の純粋な価値と見ることができます。

選択肢4

4.配当性向は、X社よりもY社の方が高い。

4:誤り(✖)

解説

X社:57.1%(120億円/210億円×100)

Y社:36.8%(70億円/190億円×100)

配当性向は「配当金総額/当期純利益×100」で求めます。当期の最終利益からどのくらい配当を支払ったかを示す割合です。

100%を超える場合は、内部留保を取り崩して配当を行っていることになります。

【問27】オプション取引

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選択肢1

1.コール・オプションは「原資産を権利行使価格で売る権利」であり、プット・オプションは「原資産を権利行使価格で買う権利」である。

誤り(✖)

解説

オプション取引とは、ある商品(原資産)をあらかじめ決めた価格で「買う権利」または「売る権利」を売買する取引のことです。

たとえば、ある商品が2万円に値上がりすると考えた人が、「その商品を1万円で買う権利」を購入したり、1万円よりも値下がりすると考えた人が「その商品を1万円で売る権利」を購入したりするイメージです。

選択肢は「買う権利」「売る権利」の説明が逆になります。コール(Call)・オプションが「買う権利」、プット(Put)・オプションが「売る権利」です。「買いたいときは店員さんを呼ぶ(=コール)」で覚えましょう。

選択肢2

2.権利行使期間中であればいつでも権利行使が可能なものをヨーロピアン・オプションといい、満期日(権利行使日)においてのみ権利行使が可能なものをアメリカン・オプションという。

誤り(✖)

解説

オプション取引での権利の売買を行う期日に関する問題です。ヨーロピアン・オプションとアメリカン・オプションの説明が逆になっています。

・アメリカン:満期日までいつでも可

・ヨーロピアン:満期日のみ可

選択肢3

3.コール・オプションの買い手の最大利益とプット・オプションの買い手の最大利益は、いずれもプレミアム(オプション料)の額となる。

誤り(✖)

解説

オプション取引の損益に関する問題です。

コール・オプション(買う権利)やプット・オプション(売る権利)を購入するには、それぞれの権利を「売ってくれる人」が必要です。オプション取引では、この四者(コール・オプションの買い手・売り手、プット・オプションの買い手・売り手)の損益の範囲に違いが生じます。

コール・オプションプット・オプション
買い手利益:限度なし
損失:オプション料が限度
利益:限度なし
損失:オプション料が限度
売り手利益:オプション料が限度
損失:限度なし
利益:オプション料が限度
損失:限度なし

まず、買い手が得られる利益に制限はありません。値上がり(あるいは値下がり)が予想どおりに進行すれば、権利行使価格との差額分の利益を得られます。ただし、買い手は売り手にプレミアム(オプション料)を最初に支払うため、純利益は商品の利益からプレミアムを差し引いた額になります。

一方、損失についてですが、値上がり(あるいは値下がり)が予想に反した場合は、権利を放棄するため、損失はプレミアム(オプション料)に限定されます。

売り手の損益は、買い手の逆となります。売り手は買い手が権利行使をしてきたら「売らなければならない義務」を負う代わりに、オプション料を手に入れます。そして買い手は自分が得をする時しか権利行使をしてこないため、売り手にとっての最大利益は、このオプション料に限定されます。逆に、買い手が権利行使をしてきたときは、上限なしの損失を負います。

以上から、買い手の利益はコール、プットのいずれも限度なしです。最大利益がプレミアム(オプション料)に限定されるのは売り手となります。

選択肢4

4.コール・オプションおよびプット・オプションは、他の条件が同一であれば、いずれもボラティリティが上昇するほど、プレミアム(オプション料)は高くなる。

正しい(正答)

解説

ボラティリティとは「価格の変動幅」のことです。オプション取引の目的である原資産の値動きの激しさを指します。

売り手の立場からすると、損失が無制限であることから、ボラティリティの大きい取引のほうがリスクは大きくなります。そのため安いプレミアム(オプション料)では取引が成立しません。

買い手の立場においても、値動きがなければオプション取引で利益を得られないため、ボラティリティの大きい取引のほうが収益のチャンスが大きいため魅力的な取引となります。

そのため、ボラティリティの大きい取引では、プレミアム(オプション料)が高くなります

他にも、権利行使価格や短期金利などがプレミアム(オプション料)の決定に影響します。

【問28】ポートフォリオ理論

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選択肢1

1.ポートフォリオのリスクとは、一般に、組成されたポートフォリオの損失額の大きさを示すのではなく、そのポートフォリオの期待収益率からのばらつきの度合いをいう。

正しい(正答)

解説

選択肢のとおりです。ポートフォリオとは異なる金融商品の組み合わせのことです。

ポートフォリオからのリターンは「期待収益率」、そしてリスクは「期待収益率のばらつき」を意味します。具体的には、ポートフォリオ全体から計算した期待収益率から「分散」と「標準偏差」という統計学で用いる数字を使い、期待される収益とブレた場合の収益の偏差を求めます。偏差が大きいほど結果がブレやすい=リスクが高いという評価になります。選択肢のように「損失額の大きさ」ではありません。

選択肢2

2.ポートフォリオのリスクのうち、分散投資によって消去可能なリスクをシステマティック・リスクという。

誤り(✖)

解説

アンシステマティック・リスクの説明です。ポートフォリオの効果として、複数の商品を組み合わせることでリスクを低減できる効果があります。異なるリスクを持つ商品を組み合わせることで、個々のリスクを分散できるためです。しかし、さすがに景気変動など市場全体のリスクまではポートフォリオでは分散できません。この分散できない市場全体のリスク、つまり分散投資をしても軽減できないリスクのことをシステマティック・リスクといいます。

選択肢3

3.ポートフォリオのリスクは、組み入れた各資産のリスクを組入比率で加重平均した値よりも大きくなる。

誤り(✖)

選択肢4

4.ポートフォリオの期待収益率は、組み入れた各資産の期待収益率を組入比率で加重平均した値よりも大きくなる。

誤り(✖)

解説

ポートフォリオの期待収益率は、組み入れた各資産の期待収益率を、その組入比率で加重平均した値となります。選択肢は「大きくなる」のではなく「等しくなる」であれば◯です。

【問29】証券税制

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選択肢1

1.上場株式等に係る配当所得等について、総合課税を選択して確定申告をした場合、上場株式等に係る譲渡損失の金額と損益通算することができる。

誤り(✖)

解説

特定口座に受け入れている上場株式等からの配当は、受け取る度に20.315%の源泉徴収が行われます。

そして1年を終えた後、①総合課税で確定申告をする、②申告分離課税として確定申告をする、③確定申告不要制度があるため申告しないの3つパターンで申告方法を選ぶことができます。

それぞれのメリットは以下のとおりです。

・①総合課税:配当控除を適用できる(累進課税が適用されるため、高所得者は②や③の方が得)

・②申告分離課税:上場株式等の譲渡損失と損益通算ができる

・③確定申告不要:確定申告の手間がない

選択肢は①総合課税を選択して確定申告をするパターンであるため、上場株式等の譲渡損失との損益通算はできません。

選択肢2

2.上場株式等に係る配当所得等の金額と損益通算してもなお控除しきれない上場株式等に係る譲渡損失の金額は、確定申告をすることにより、翌年以後5年間にわたって繰り越すことができる。

誤り(✖)

解説

上場株式等の譲渡損失の繰越し期間は、損失が発生した年の翌年以後「3年」です。損失を繰り越す間は確定申告が必要になります。

選択肢3

3.簡易申告口座には、上場株式等の配当等を受け入れることはできない。

正しい(正答)

解説

冒頭の問題文のとおり、簡易申告口座とは源泉徴収のない、いわゆる一般口座のことです。受け取る際に源泉徴収が必要な上場株式等の配当を受け入れることはできません。

選択肢4

4.源泉徴収選択口座は、開設が投資家1人当たり1口座までとされており、複数の金融機関にそれぞれ源泉徴収選択口座を開設することはできない。

誤り(✖)

解説

源泉徴収選択口座とは、いわゆる特定口座のことです。複数の金融機関で開設することができます。

一方、少額投資非課税制度が適用されるNISA口座は、1人あたり1口座となりますので、こちらとの混同を狙った選択肢と考えられます。

上場株式等の取引は源泉徴収さえすれば取引ごとに納税が完結します。そのため、個人がいくつ口座をもっていても、国としては税金を取り損ねる心配がありません。

NISAの場合は、年間の取引限度額と累計限度額を管理できなければ、非課税枠を超えて納税を免除してしまう可能性があります。そのため、NISAは一人一口座とし、一つの証券会社に管理させることを選んだのだと思います。

【問30】セーフティネット

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選択肢1

1.確定拠出年金の加入者が運用の方法として選択した定期預金は、預金保険制度による保護の対象とならない。

誤り(✕)

解説

確定拠出年金で選択した定期預金も、預金保険制度の対象となります。

【預金保険制度の対象】

・預金(当座預金、普通預金、別段預金、定期預金、通知預金、納税準備預金、貯蓄預金)

・定期積金、掛金、元本補てん契約のある金銭信託(ビッグなどの貸付信託を含みます)

・金融債(保護預り専用商品に限ります)等

(参照)預金保険機構HP

選択肢2

2.日本国内に本店のある銀行の海外支店や外国銀行の在日支店に預け入れた預金は、その預金の種類にかかわらず、預金保険制度による保護の対象とならない。

正しい(正答)

解説

選択肢のとおりです。預金保険制度の対象になる金融機関は、日本国内に本店のある金融機関に限られます。

選択肢3

3.日本国内で事業を行う生命保険会社が破綻した場合、生命保険契約者保護機構による補償の対象となる保険契約については、高予定利率契約を除き、原則として、破綻時点の責任準備金等の80%まで補償される。

誤り(✕)

解説

生命保険契約者保護機構とは、生命保険会社が破綻した際の保険契約者の保護を行うもので、「責任準備金等の90%」までが補償の対象です。

責任準備金等とは、保険業法により保険会社に積み立てが義務付けられているお金のことです。保険料の一部や運用収益が財源となり、通常「顧客が払い込んだ保険料総額>責任準備金」となります。そのため、支払った保険料よりも、補償額は少なくなることが一般的です。高予定利率契約(過去5年間で常に予定利率が基準利率を超えていた契約)において補償率が90%を下回ることがあるのは、選択肢のとおりです。

(参考)生命保険契約者保護機構HP

選択肢4

4.日本国内に本店のある銀行で購入した投資信託は、日本投資者保護基金による保護の対象となる。

誤り(✕)

解説

日本投資者保護基金とは、証券会社が破綻した際に一般顧客(金融機関などの適格機関投資家等を除く)の金銭や有価証券を1,000万円を限度に補償する基金制度です。金融商品取引法の定めにより、第一種金融商品取引業者(証券会社)が加入しています。

選択肢では、銀行で購入した有価証券が補償対象になるかどうかを尋ねています。銀行などの証券会社以外の金融機関は、日本投資者保護基金に加入していないため、基金の補償対象にはなりません。