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「就業不能保険」のことを初めて知ったとき、正直「ここまでの保障っているの?」と思いました。
実際、「いらない」という声もちらほら聞かれる保険の一つです。
しかし、現実に保険商品として存在し、加入者がいるからには、確実に誰かの困り事を解決していることは間違いありません。
一体、どんな人のための保険で、実際にいつどのような時に役に立っている保険なのでしょうか。
結論からいうと、就業不能保険はすべての人に必要な保険ではありません。
ただし、必要性の高い人にはかなり強力なお守りとなります。
この記事では就業不能保険について、なぜ「いらない」と言われるかの理由と、どのような人に役立つ保険なのかを解説します。

1級FPライター
イシダ
会計事務所で顧客担当をしていた1級ファイナンシャル・プランニング技能士。保険募集人の経験もあり。Lancers金融ライタースペシャリスト認定。
就業不能保険とは
就業不能保険は、病気やケガで長期間働けなくなったときに、毎月一定額の給付金を受け取れる保険です。
つまり、メインターゲットは「働いて収入を得ている人」であり、子どもやお年寄りではなく、おおむね20代から50代の働き盛りの人たちになります。
なぜこのような保険が存在するかというと、このリスクをカバーする公的制度を十分に受けられない人が結構いるからです。
また、他の保険の多くは、死亡や入院への備えとなるものですが、これらは「働けない期間が長引いて収入が途絶える」というリスクはカバーできていません。
就業不能保険は、そこに特化して保障を受けられることが最大の特徴です。

働けなくなってもお金もらえるの?めちゃくちゃいいじゃん!

まあここまでは、一般的な説明だね
ここから、この保険のちょっと「クセのあるところ」を紹介していくよ
就業不能保険の特徴
「働けなくなったら給付金が出る保険」。
これだけなら、とてもシンプルですし耳触りもとってもいいですよね。
しかし、さすがに何もかも保障していたら成り立ちません。
実際には、給付にこぎつけるまでに、保険ごとにさまざまな条件・制約があります。

数ある保険のなかでも、保険会社によってかなり商品性にばらつきがみられる保険です
ここでは、保険商品としての注意点もかねて、一般的な特徴を整理します
特徴①:給付が開始するまでの期間
給付金が支払われるのは、「就業不能状態」が一定期間続いた後からです。
どのくらい続けば給付の対象になるかは、商品によって異なりますが、筆者が知る限り、大きく2パターンあります。
一つは、就業不能状態になってから60日ほどを支払い対象外とするものです。
このパターンの商品だと、働けなくなって60日を過ぎてから保険金が支払われます。つまり、約2か月は自身の貯蓄で生活する必要があります。
もう一つは、すぐに給付が始まるものです。
このパターンの商品では、就業不能状態が始まったばかりの保障と、長引いたときの保障を、それぞれ「短期」「長期」などとして分けて設計されています。
このタイプの商品で「短期」の部分も保障として組み入れて契約すれば、就業不能状態が始まって間もない時期から給付を受けることもできるのです。

「短期」では、「ひと月の就業不能状態が◯日以上」のような条件を満たせば給付が開始されます
ただし、すぐに保障が始まる保険であるほど、保険料は高くなります。

保険料のだいたいの費用感も、後半で解説するね
特徴②:就業不能状態の範囲
「働けなくなった」状態のことを、就業不能保険では「就業不能状態」といいます。
この「就業不能状態」の定義も、保険会社によって異なります。
一般的には、①入院している、②在宅療養を受けている、③所定の障害状態・要介護状態になるといった状態が対象になっていることが多いのですが、全部が対象になっていない場合もあるので、契約前に必ず確認が必要です。

この状態が一定期間継続することで、給付の対象になります
60日以降から対象になったり、初月から対象になったりする違いがあることは、前述のとおりとなります
このうち、気になるのは「在宅療養」が対象になっている点ではないでしょうか。
これは残念ながら「自宅で休んでいる」だけでは対象にならず、「医師の診療にもとづく療養」であることがポイントになります。
具体的には、診察料や管理指導料などが算定される、いわゆる「点数」がつく診療を受けていることが条件になっていることが一般的です。
医師から「安静にしてください」とアドバイスを受けて休んでいるだけでは、対象にならない可能性があるのです。
特徴③:精神疾患・うつ病の扱い
治療が長引くことが多く、誰がなってもおかしくない病気といえば、うつ病などを始めとする精神疾患があげられます。

私もちょっとした経験があります
職場で自分だけ成果が上がらなかった時期があって、時間外や休日も働いていたら、ある朝ベッドから起き上がれなくなりました
本当に怖い…
この怖い病気がちょっと気になっている人は、保障の対象になっているかどうかも気にとめる必要があります。
これも、保険会社ごとの「就業不能状態」の定義の問題であり、精神疾患を保障の対象としている保険と、対象としていない保険があります。

同じ就業不能保険でも、何がどこまで保障されるかが結構違うんだね

そうなんだよね
「どんな人に向いているか」とか「いる・いらない」の結論も大事だけど、必要性の高い人が保険の中身を誤解していたら意味がないので、ちょっと丁寧に説明したよ
就業不能保険が「いらない」と言われる3大理由
就業不能保険に対して「いらない」という声は少なくありません。
その理由は大きく3つに分かれます。
会社員・公務員には傷病手当金がある
病気やケガで働けなくなった場合、企業が加入する健康保険や公務員の共済組合から、傷病手当金が支給されます。
支給額は標準報酬日額の3分の2(おおむね給与の3分の2)で、休業4日目から支給の対象となります。
支給期間は最長1年6か月です。

働けなくなっても「即無給」とならない、会社員や公務員のかなり手厚いセーフティネットです
障害年金もある
病気やケガが長引いて一定の障害状態になった場合、障害年金を受け取れる可能性があります。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。
障害基礎年金は国民年金に加入していれば受給の対象になるため、会社員に限らず、自営業者や専業主婦(夫)も条件を満たせば受け取れる可能性があります。
支給額は1級が年額105万円、2級が年額84万円です(令和8年度時点)。18歳未満などのお子さんがいれば加算額もあります。
厚生年金に加入している会社員や公務員などは、これに障害厚生年金が上乗せされます。
3級も支給要件に加わる上、年金の対象にならない状態でも障害手当金の対象になる可能性があり、公的保障がさらに厚くなります。

さっきの傷病手当金もあるわけだから、サラリーマンに対する働けないリスクの保障は、かなり大きいんだね

そうだね
自営業者との差がすごいことに…(私も自営業者です)
保険金の支給条件が厳しい
就業不能保険は「働けない状態」であれば何でも給付されるわけではありません。
前項のとおり、各保険が定める「就業不能状態」に該当することが証明されなければなりません。

医師の診断書で判断されることが一般的です
さらには、支払い対象外となる期間があること、そもそも精神疾患は対象外の保険もあることなど、実際に働けなくなったとしても、給付を受けるには一定のハードルがあります。
「働けなくなったら給付金が出る保険」と、これを好意的に解釈したまま加入すると、「全然使えなかった!」という印象を受けるでしょう。

「就業不能状態」の定義が複雑なうえに、商品ごとでも違うっていうのがね…
就業不能保険は本当にいらないのか
では、就業不能保険は本当に「いらない保険」「使えない保険」なのかというと、そんなことはありません。
会社員や公務員には傷病手当金があります。働けなくなってもすぐに困窮するわけではありません。
その一方で、自営業者やフリーランスには、この傷病手当金がありません。受け取れる障害年金も基礎年金のみなので、1級や2級に該当するケースに限られます。
つまり、自営業者やフリーランスのほとんどは、働けなくなったときの公的保障がない状態なのです。

特に、自分が働けなくなると即収入ゼロになる事業の場合、危険性が高まります
個人事業には、いろいろな事業内容があります。
そのなかでも、例えば手作りの商品を売っているクリエイターさんや職人さんのように、自分自身が特定の作業をしなければ売上が生まれないタイプのお仕事は、自分が働けなくなれば即収入ゼロとなります。

たとえば、個人でケーキ屋さんを営んでいる場合、ご自身が毎朝ケーキを作って売ることができなければ、その日の収入はゼロに…
こうした事業主のうち、貯蓄が十分でない方や、養っているご家族がいる方は注意が必要です。
あくまで目安ですが、2年ほどの生活費をまかなえる蓄えがない場合は、就業不能保険の必要性は高いといえます。

自営業やフリーランスの方のリスクはわかったよ
じゃあ、会社員や公務員はノーリスクなの?
会社員や公務員の場合、傷病手当金は最長1年6か月の有期の保障です。その後も回復できなければ、収入は途絶えたまま固定支出だけが続きます。

就業不能リスクへの備えは、通常、「貯蓄+家族」となります
「共働き」「頼れる家族が近くに住んでいる」状況なら、収入が途絶えても生活が立ち行かなくなることまでは起こりにくいといえます。
逆にここに不安があれば、その場合に保険を検討する、という考え方でよいと思います

でもいざ「保険が必要だ」って気づいても、就業不能保険は保険料が高くて費用対効果が悪いってよく聞くよ

確かに、就業不能保険は安くありません
次は保険料の費用感を、私なりに解説してみます!
就業不能保険の保険料を抑えるコツ
就業不能保険は保険料が高めと言われますが、設計の工夫次第でわりと抑えることができます。

以下は、私がざっくり調べた費用感です
あくまで目安ですよ
たとえば、30歳男性が、月20万円・65歳までの就業不能保険(給付までに60日の待機があるパターン)に加入する場合、保険料の目安は月5,000円くらいです。保険料は保険期間中に一定ですので、この場合、35年間の総支払額は約210万円になります。

安くはないよね…知ってた

「ここまで手厚くしなくて大丈夫」という場合は、保険料を抑えるコツがあるよ
給付の対象外となる期間を延ばす
給付の開始を遅らせると保険料はかなり抑えられます。
たとえば、上記のタイプで保険料が支払われない期間を60日から180日に延ばすと、あくまで目安ですがこのような感じになります。
| 支払対象外期間 | 月額保険料の目安 | 保険料総支払額の目安 |
|---|---|---|
| 60日 | 約5,000円 | 約210万円 |
| 180日 | 約3,500円 | 約147万円 |
就業不能状態になってから半年は貯蓄などでカバーし、それ以上長引いた場合の「本当にヤバい事態」にだけ備える、というイメージです。
初期の給付額を低くしてもらう
保険によっては、給付が始まってからしばらくは、給付額を本来の半分程度に抑えることも選択できる場合があります。
給付額を低く抑えることのできる期間は、おおむね1年半ほどです。
月20万円の保障であれば、最初の1年半は月10万円(60日などの対象外期間中を除く)、そこからさらに就業不能状態が続けば、月20万円となります。これにより、保険料はさらに月1,000円ほど安くなります。

会社員や公務員の傷病手当金が途切れるころを意識して設計されていると考えられます
傷病手当金がある会社員や公務員向けの設計ですが、貯蓄や家族の収入ですぐに困るわけではない自営業の方にもおすすめです。
保障期間を短くする
65歳ではなく、たとえば、子育てが終わる55歳までにするなど、保障期間を短くすると月額がさらに1〜2割ほど安くなります。固定支出が大きい時期に絞って備える、という考え方です。

高くて費用対効果がいまいちってイメージがあったけど、保障したい範囲を見極めれば結構安くなるんだね

基本的には自分でカバーし、本当にやばい事態に備えるものにできれば、保険料は抑えやすいです
しかし、就業不能になってすぐに給付が始まるタイプでなければ困る、という場合もあるでしょう。

すぐに給付が始まるタイプって、保険料はどのくらい違うの?

これも肌感でざっくりだけど、さっきの保険料の1.5倍くらいになる感じだよ

意外とそのくらいなんだ…
どうしよう…

どのタイプが自分に合うかは、自分の働き方だけでなく、家族や家計の状況によっても変わります。
もっといえば、そもそも保険ごとの保障範囲も違います
保険のプロに、自分の不安をぴったりカバーできる保険を見つけてもらうことがおすすめです
まとめ|迷ったらFPに無料相談しよう
就業不能保険は、全員に必要な保険ではありません。傷病手当金がある会社員や公務員、貯蓄のある方、家族の収入に頼れる方であれば、優先度は下がります。
一方で、自営業者やフリーランスで、自分が働かなければ家族の収入が即ゼロになる方、住宅ローンや教育費などの固定支出が多い時期にある方、2年ほどの支出をまかなえる蓄えがない方は、優先度が高いです。
自分の働き方や家計に合った設計を選ぶのは、一人では判断しにくい部分もあります。
保険のプロに相談すれば、就業不能保険だけでなく、今入っている保険全体を見ての保障の過不足について相談できます。
無料相談を受けているFPもいるため、まずは面談してみましょう!
「自分には必要?」と迷ったまま放置すると、きっとまた同じことで悩みます
「迷ったまま」を繰り返すのが一番もったいないです

