鳩(ハト)の駆除や撃退が法律で禁止されているって本当?許可がいらない鳩対策を解説

鳩のフンや羽の被害から家を守るため、鳩を何とか撃退したいと考えている方の中には「鳩を自分で駆除すると違法」というようなインターネット情報に戸惑っている方がいらっしゃるかもしれません。

この記事は、鳩フン被害に悩まされて何とかしたいと考えている方のために、鳩駆除の際に気を付けなければならない法律の話や、法に触れずに行える具体的な鳩対策を解説します。

鳩の駆除で注意が必要な「鳥獣保護管理法」とは

鳩の駆除や撃退を考える際、注意しなければならない法律に「鳥獣保護管理法」(旧:鳥獣保護法)があります。

鳥獣保護管理法」とは、野生動物の狩猟や保護だけでなく、人が野生動物から生活を守る際のルールも定めている法律です。

私たち一般人が野生の鳩を駆除しようとする場合であっても、その方法によっては法に抵触する可能性があるため、鳩対策においてもっとも注意しなければならない法律です。

禁止されているのは「無許可」の「捕獲等または採取等」

鳥獣保護管理法」によって、野生の鳩を「捕まえたり傷つけたりする行為」(捕獲等)や、巣の撤去に伴い鳩が生んだ卵やひなを「取ったり傷つけたりする行為」(採取等)を「無許可で行うこと」が禁じられています。

鳥獣保護管理法の禁止行為である鳥類と卵の捕獲等又は採取等の図解

捕獲等または採取等行政機関の許可なく行った場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑が科せられる可能性があります。

違反になる行為の例

鳩を傷つける可能性のある追い払い

追い払うために鳩をびっくりさせる程度の行為であれば、私たちでも許可なく行うことができます。

環境省の「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律の細部解釈及び運用方法について」という都道府県知事宛ての文書が、警察庁の通達に添付されており閲覧できるようになっているのですが、この文書には、鳥獣を追い払う行為が「捕獲等」にあたるか否か(許可がいるのかどうか)の考え方が記載されています。

文章自体はとても長いので、重要なところだけを抜粋します。

追い払いのための発砲などの威嚇行為についても、基本的には鳥獣を自己の支配下に置いたり殺傷しようとすることを目的としたものではなく、捕獲等の行為には当たらないと考えられる

音響等により、対象鳥獣を殺傷しない追い払い(空砲を用いた銃器による追い払いを含む)の場合は、捕獲と異なるため、法第9条第1項に基づく許可を要しない

(出典)平成30年5月29日付け環境省自然環境局長から各都道府県知事に発出された「鳥獣保護管理法の細部解釈及び運用方法について」より

つまり、音などでびっくりさせて追い払うことは、捕獲等にあたらず許可なくできるということです。(銃刀法による規制が別にある点はここでは省略)

しかし、鳩を追い払うための手段については限度もあります。

当該追い払い行為により当然予想し得る、鳥獣を殺傷し、又は鳥類の卵に損傷を与える危険が発生した場合は法に抵触すると考えられる。

つまり、鳩を追い払うために「いやそれは鳩にケガさせるでしょ!」という手段を用いれば「捕獲等」にあたる可能性があるということです。

例えば、空砲ではなく弾の入った銃器で追い払うことについては「追い払い対象に命中させる意図がない場合であっても、鳥獣を殺傷する可能性が高く、威嚇の範疇を越えているものと考えられる」とし、許可が必要であるとしています。

筆者
筆者

追い払う行為は勝手にやっていいけど、追い払うための手段として殺意高めな物を使うなら許可を受けてね、という話のようです

筆者
筆者

攻撃力のある物を使用して追い払わないようにしましょう

卵やひなの存在を知りながら巣を撤去する行為

鳩の巣に卵やひながいる場合、巣を撤去する行為は「採取等」にあたりますので、許可を受けずにやることはNGです。

環境省では「営巣木に現にひな又は卵が存在し、その営巣木を伐採することによりそれらが落下し、殺傷する又は損傷を与えることが明白である場合に、それを認識しつつ伐採を行ったときは、行為者が法第9条第1項の許可を得ていなければ法に抵触すると考えられる」としています。

さすがに木を切って卵やひなを落下させる人はいないと思いますが、ここまでするつもりがなくても産卵後の巣の撤去は、行政機関の許可を受けるか、駆除業者に依頼することが必要です。

多くの市役所のホームページで、卵のある巣を勝手に撤去しないよう呼び掛けています。

【参考】空っぽの巣であれば許可なしで撤去できる

卵やひなのいる巣を許可なく撤去することはできませんが、鳩の巣が空っぽであれば、許可なしで撤去をしても違反にはなりません。

このことから、鳩が巣を作り卵を産んでしまったとしても、巣立ちを待って巣が空っぽになれば、行政機関の許可なしで撤去することができます。

ただし、撤去する時は、安全面や衛生面から、役所に相談するか専門の業者に依頼することをおすすめします。

また、「巣立ちしたのかはっきり分からない」「そんなに待てない」という場合も役所に連絡しましょう。

鳥獣保護管理法と動物愛護法の違い

鳩の駆除に関する法律として、もう一つ知っておきたいのが「動物愛護法」です。

動物愛護法」とは、人と関わりのある動物の保護や管理に関するルールを定めた法律になります。

動物愛護法」では「愛護動物」をむやみに傷つけたり傷つける可能性のある行為を禁止しているのですが、鳩もまた、この「愛護動物」にあたるケースがあります。

ちなみに「むやみに傷つける行為」で比べた場合、「動物愛護法」の罰則は「鳥獣保護管理法」よりも重くなります。

法律名禁止行為懲役刑・罰金刑
鳥獣保護管理法許可なく捕まえたり傷つけたりする行為1年以下または100万円以下
鳥獣保護管理法許可なく卵を採取したり傷つけたりする行為1年以下または100万円以下
動物愛護法みだりに傷つける行為5年以下または500万円以下
動物愛護法みだりに外傷が生ずるおそれのある暴行1年以下または100万円以下

「みだりに」とは正当な目的がない、または正当な目的があってもその手段が社会的に相当でないことを意味します。

鳩が愛護動物にあたるケースとは

鳩が動物愛護法の保護対象となる「愛護動物」にあたるケースがあります。

そのケースとは、その鳩が「いえばと」(1号動物)に該当するか、「人の占有下にある鳩」(2号動物)に該当するかのいずれかになります。

「いえばと」とは

いえばと」とは、人に関わって生きている鳩のことです。

動物愛護法第44条の「第1号」に定められていることから、「1号動物」と呼ばれることがあります。

「1号動物」は「2号動物」と違って、人の占有下(≒人に飼われている状態)になくても愛護動物にあたることが特徴です。

動物愛護法第44条第4項

(前略)「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。

 牛、馬、豚、めん羊、山羊、犬、猫、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる

 前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は虫類に属するもの

(出典)e-Gov検索:動物の愛護及び管理に関する法律

(※)文中のラインや太字は筆者による加工です。

環境省の対応ガイドラインによれば、鳩の「ドバト」のうち、市街地にすんでおり人の給餌等によって人の社会に関わっているものは「いえばと」とみなされることがあるとしています。

(参考)環境省HP:対応ガイドライン

筆者
筆者

鳩フンの犯人はこいつです

「ドバト」が人の占有下にあれば、それは「いえばと」の判定とは関係なく、愛護動物(2号動物)になります。

「人の占有下にあるかどうか」については、次項で解説します。

「人の占有下にある鳩」とは

「人の占有下にある鳩」もまた、動物愛護法の「愛護動物」にあたります。

動物が「人の占有下にあるかどうか」については、飼育関係があるかどうかがポイントです。

環境省の対応ガイドラインによると、動物の飼い主の定義に関して「保護に必要な食物又は起臥(きが)の場所などを与え」(長崎簡易裁判所昭和45年2月18日判決)とした判例があるそうで、餌を与えているだけでなくすみか(寝床)を人が与えていることが判断要素になっているとして紹介しています。

鳩の「キジバト」は野生動物ですので、基本的には鳥獣保護管理法の対象にしかなりません。

しかし、もし「キジバト」が人の占有下にあれば、法的には「愛護動物」にあたることになります。

鳩対策は「鳩を傷つけない方法」でやることが必要

飛んできた鳩を見ても、それがどちらの法の保護対象になるのかはわかりませんが、いずれにしても「傷つける可能性がある行為」をしなければ、どちらの法にも触れることはありません。

したがって、鳩のフン被害をなくすには、鳩を傷つけずにできる範囲でフンをさせないことを考える必要があります。

また、鳩には場所に対する執着心が強く、お気に入りの場所を見つけると何度か安全性を確かめにやってきます。

筆者
筆者

このことは経験から確信しています

したがって、鳩対策は飛んで来る個体をどうにかするよりも、鳩が執着する前にその家を鳩の「お気に入り」候補から外させて、鳩の意思で去ってもらうことがベストです。

そのためには、鳩が好みそうな場所やすでにフン被害が始まっている場所を、鳩にとって安心できない場所・快適でない場所に変えてやりましょう。それであれば、法の許可なしでできることがたくさんあります。

安心して休めなくなれば、鳩はこなくなります。

法の許可なしでできる鳩対策

ここまでのとおり、鳩対策は鳩を傷つけない方法で行う必要があり、一番良いのはその家を「お気に入り」候補から外させて鳩の意思で去ってもらうことになります。

ここでは、法の許可がなくてもできる、鳩を傷つけずに鳩を来なくさせる対策をご紹介します。

鳩のフンを掃除する

鳩のフンは、見つけたらできる限り早く掃除をすることが非常に重要になります。

鳩のフンを放置すると鳩がその場所を安全だと判断してしまうからです。

筆者
筆者

ゴム手袋と消毒を忘れずにしましょう!

フンそのものを片付けても何となく動物っぽい臭気が残る場合は、見えないところにフンをしています。

物陰にフンがないか、厳しくチェックしてください。

筆者
筆者

最初は手すりにフンをして人間の反応を見て、安全確認ができたら次はベランダの床…というように、だんだん近づいてきます

物陰にフンを始めたら、その近くに鳩がかなり気に入っている場所があるはずです!

音を立てて追い払う

ベランダの窓を開け閉めするなど、音を立てて追い払う対策も有効です。

鳩は安全であると認識した場所に居着いてしまうため、人の往来があることをアピールしましょう。

鳩が嫌がる臭いのするものを置く

動物用の忌避剤やバラの匂いの芳香剤など、鳩が嫌がる臭いがするものを置く対策もあります。

鳩がお気に入りの場所にフンをして安全性を確かめるのを逆手にとった、良い作戦だと思います。

ただし、臭いが薄まれば効果も薄まるため繰り返し置くことが必要です。また慣れてしまうと効果がなくなるとも言われています。

筆者
筆者

鳩対策の最前線はどうしても屋外になるため、どんなに鳩が嫌がる臭いであっても、実際の効果は「効果範囲」、「持続時間」、「風通し」などでかなり変わってくるはずです

臭いによる鳩対策の評価が分かれるのは、効果に関わる外的要因が多すぎるからではないかと思います

光を反射するものを吊るす

光を反射するものを吊るし、鳩を視覚的にびっくりさせて来ないようにさせる方法です。

筆者もスパイラル型のキラキラした鳥除けの棒をベランダに数本吊るしたところ、その年は鳩が来なくなりました。

風で揺れるたびに見え方が変わって動いているように見えるところに警戒してくれたのだと思います。

筆者
筆者

ちなみに真ん中あたりを踏むと折れます

吊るす前の準備で地面に置かないようにしましょう(1敗)

カラフルなタイプも売っていますが、単色で揃えたほうがベランダの景観を損ねにくいと思いますのでおすすめです。

フクロウが付いたタイプもあります。フクロウの写真は両面にあり、しかも角度によってフクロウの見え方が変わるように作られているため、鳥が光に慣れてしまう事態を防ぎます。

鳥の模型を吊るす

フクロウやカラスなどの模型を鳩が入ってくるベランダ等に吊るして、鳩を視覚的にびっくりさせて追い払う方法になります。

農林水産省が監修した「野生鳥獣被害防止マニュアル改訂版ー鳥類編ー」という農業のためのマニュアルで紹介されているコラムによると、鳥の模型をぶら下げる行為に効果があるという声は多いとのことです。

ちなみにそのコラムでは、カラスの例にはなりますが、逆さまにぶら下げるとしばらく近づかなかったという実験結果があるとのことでした。

ただ、リアルな模型は人もまたびっくりします。鳥が苦手な方や心臓の弱い方が家族にいる場合は注意が必要です。

筆者
筆者

畑で使っているのは見かけますが、住宅やオフィスで使うのは怖いかもしれないですね

手すりにテグスを貼る

鳩が手すりにとまる習性を利用して、手すりの少し上にテグスを張る対策です。

テグスそのもので物理的に進入を止めるというよりも、細くてよく見えないテグスに体が触れることにビックリさせるものになります。

筆者の場合、光反射グッズをものともしない鳩が現れたのでテグスに挑戦しました。

最初はテグスが緩すぎたり位置が微妙に鳩の行動と合っていなかったりして、すり抜けられていたのですが、テグスをピンと張ってみたり本数を増やしたりしてみたところ、鳩がまったく来なくなりました。

筆者は、上記の株式会社髙儀さん(Takagiさん)の防鳥用のテグス(黒色)と、スリーエムさんのコマンドフックを使っています。

スリーエムさんのコマンドフックは賃貸物件の管理会社さんに教えてもらったのですが、きれいに剥がせるので賃貸物件の外壁やベランダにも使えておすすめです。

筆者
筆者

テグスは100均にもありますが、長さが80mくらいしかありません

実際にやるとわかるのですが、テグスは鳩が諦めるまで追加で張ることになるため、思った以上に消費します

500mくらいで売っている防鳥専用のテグスのほうがコスパは良いです

プラスチック製・樹脂製の鳥よけシートを設置する

鳥よけシート(とげ・剣山・スパイク)を手すりの上や、鳩のお気に入りの場所に敷き詰める方法です。

鳩が降り立ったり休んだりするのを防ぎ、鳩に諦めてもらう対策になります。

ちなみに筆者の賃貸物件の管理会社さんが提案してくれたのも、鳥よけシートでした。

鳥よけシートには色々な種類がありますので、とげの素材長さで選ぶと良いと思います。

とげの素材は鳩を傷つけないプラスチック製・樹脂製のものを選び、とげの長さは鳩が歩きにくい10センチ程度のものを選ぶとよいでしょう。

鳩の侵入口に防鳥ネットを張る

防鳥用のネットをベランダなどに張り、広範囲で鳩の進入を防ぐ方法です。

他の対策に比べると手軽さには欠けますが、鳩を目的の場所に物理的に近づけない対策であるため、鳩が慣れようが慣れまいが関係なく効果があります。

他の対策で諦めてくれなかった鳩にも有効です。

ネットを張るためのフックには、テグスと同様にこちらがおすすめです。きれいにはがせるので賃貸物件でも使えます。

筆者
筆者

賃貸物件にネットを設置するときは、念のため管理会社に連絡を入れておきましょう

鳩が気に入りそうな場所をふさいでおく

鳩は雨風をしのげる場所や、周りを見わたせる高い場所を好みます。

もし鳩が気に入りそうな場所があれば、あらかじめその場所に物を置いたり、テグス・鳥よけシート・ネットなどを設置したりして、ふさいでおくことがおすすめです。

すでに鳩がその場所に執着していても、その入り口をふさいでしまえばその場所は諦めてくれます。

鳩駆除・撃退は「傷つけない方法」を

追い払うためとはいえ、野生の鳩を傷つけることはNGです。

許可を受けて強硬な手段をとることも出来ないわけではありませんが、もっとも良いのは、許可なしでできる「鳩を傷つけずにできる対策」です。

鳩がその場所に執着してしまう前にしっかり鳩よけ対策を実施して、鳩の巣作りシーズンである春(3月~5月)を無事に乗り切りましょう。